17歳のカルテ
17歳のカルテの簡単なあらすじ
自殺未遂をして精神科病棟に入院することになった主人公スザンナが、入院している少女たちと交流することで自分の心と向き合うストーリーです。最初こそ病棟に馴染めなかったスザンナですが、リサという少女との出会いで精神科病棟に居心地の良さを感じるようになります。しかし、友人を自殺に追い込んだリサの行動に疑問を抱くようになり、社会復帰することで物語は終わります。
17歳のカルテをおすすめする理由
原作はスザンナ・ケイセンの「思春期病棟の少女たち」という自伝的小説になります。映画では主にリサの猟奇的で冷酷な態度ばかりがピックアップして描かれていますが、原作では他の入院患者の心の問題や行動、スザンナの精神面や感覚がもっと鮮やかに、何てこともないように軽やかに描かれています。どちらが良いと比較するまでもなく、原作と映画では色々と違い過ぎて、別物と考えた方が良さそうです。しかし、小説としては確実に「思春期病棟の少女たち」の方が読んでいて心地が良いし、映画として観るなら「17歳のカルテ」の方がドキドキハラハラして満足できると思います。
映画の原題は「Girl, Interrupted」で、意味は「中断された少女」という意味です。日本語題はあまり良いと思いません。確かにカルテのシーンは印象的ではありますが、ただ印象的なだけです。
それよりもやはり、スザンナがフェルメールの絵画である「中断された音楽の稽古」の絵の中の少女に何かを感じ取るシーンは心に刺さります。このシーンがカットされていてDVDでしか観ることができないのが残念です。
リサばかりが注目されますが、私はやはりスザンナの心の動きを観るのが面白いと思います。演じているのが、本当にスザンナと同じ病気を持つウィノナ・ライダーなのもリアリティーがあって好きです。
時計じかけのオレンジ
時計じかけのオレンジの簡単なあらすじ
舞台は近未来のロンドン。主人公アレックスは、クラシック音楽を愛しながらも不良仲間とドラッグや暴力に明け暮れる少年です。アレックスはある日強盗に入った家で乱闘になり、住人を殺してしまい、仲間からも裏切られ自分だけ逮捕されてしまいます。そして収監された彼は、刑期を短くするかわりに新しい矯正方法の被験者になることを持ちかけられます。そのさきに彼を待つのは、恐ろしい治療法「ルドヴィコ療法」だったのです。
時計じかけのオレンジをおすすめする理由
原作の小説で描かれた過激な暴力シーンなども、その迫力を失うことなく映像化されています。しかし、アレックスがルドヴィコ療法を受けて出所した後を描くシーンが、現在流通している完全版とされる小説に比べ映画版は短く、その部分については賛否の分かれる可能性もあります。
この映画のお気に入りのシーンは、アレックスが「ルドヴィコ療法」を受けるシーンです。
彼が受けることになるこの療法の内容は、残酷な映像を無理やり長時間見せ続けることにより、被験者に反射的に暴力的なものなどに対し吐き気や嫌悪を催すようにするというものです。まぶたを固定されたアレックスが苦しみながらも残虐な映像を見せられ続けるこのシーンは、この映画における狂気やバイオレンス性をよく表現していると思うので、気に入っています。
風と共に去りぬ
風と共に去りぬの簡単なあらすじ
アメリカ南北戦争を生き抜いたスカーレット・オハラの半生を描いた超大作。戦争前は気は強くても、南部女性らしい優しさを持っていたスカーレットが、戦争で総てを失った挙句、お金儲けだけを考えて生きていきます。ずっと好きだったアシュレと結ばれず、お金の為にレットと結婚しますが、最後に自分が本当に愛していたのはレットだったと気付きます。しかし時すでに遅し。2人の間に生まれた愛娘を失ったレットはスカーレットの元を去って行ってしまいます。
風と共に去りぬをおすすめする理由
あれだけの長編小説をかなり上手くまとめています。例えばスカーレットには3人の子供がいましたが、映画では1人になっています。また、スカーレットのキツ過ぎる面は抑え、聴衆が好感を持てる女性に仕上げています。
戦争によって変えられてしまう人の人生、又、戦争後に生き延びて行くだけの強さがあったか無かったかで、滅びてしまう家も幾つもあります。スカーレットもお金の亡者の様になって働きますが、そうしなければ生きて行けなかった当時の状況をよく描いています。そして、その中に恋愛が上手に絡まっていますが、メラニーの存在が映画の中で静かながら大きな役割を果たしているでしょう。
お気に入りのキャラクターはスカーレットです。綺麗で男性にモテますが、いざとなれば自分のことが優先なので、平気で男性を怒ったりします。自分に自信がある点が、時にはコミカルで、また責任感から家族を養う為に自分一人で苦しみながらお金の為に働く姿には頼もしさと共に、頼れる男性の家族がいない怖さも感じます。それでも、南部女性として育てられた彼女は「明日は明日の日が昇る」と、希望を捨てることなく、強く生きていくところは尊敬出来ます。
私の中のあなた
私の中のあなたの簡単なあらすじ
白血病の姉を持つ妹アナは、長年姉のドナーとして犠牲になってきたことを理由に弁護士を雇い両親を訴えます。複雑な家庭環境の中で見えてくる家族の本当の姿とはなんなのか考えさせてくれます。
私の中のあなたをおすすめする理由
原作は登場人物ごとに主観が入り、映画よりも細かい心理描写をしていてより深い感じです。
お気に入りのシーンはラストあたりの白血病の姉と母親が病室のベッドで本音で語り合う所です。ここで物語の芯が通ります。なぜアナはドナーをいままであれだけ我慢して姉のためにやったのに、急に嫌だと両親を訴えた理由にはただ自分が辛いだけではなく、家族や病気の姉のことを思った結果だったんです。
主役といえるアナに焦点が向きがちな物語ですが、この映画の主役はこの家族一家であり、家族のあり方について考えさせてくれるシーンです。そして一番の感動のシーンです。姉は最後に母と抱き合い、大丈夫、ママはこれからもやっていけると言います。まるで立場が逆転した様に優しく微笑みながら言うのですが、これから死に向かうというのに穏やかなのは、アナのお陰なんですね。
登場人物で気に入ったのはやはり妹のアナです。幼さの残る可愛い顔立ちから垣間見る悲しみの眼と姉への思いに心を打たれます。家族の中で誰よりも強いと思いました。